家から近くの海へ初泳ぎに出かけた。庭に午後干したばかりの洗濯物はもうパリパリに乾いている。天候は今日も晴れ。気象庁がストに入っていて天気予報もない。オーストラリア人は天気予報をあまり気にしない。夏は連日晴れの日が続くのが当たり前で気にならないようだ。気温は今日も38℃を超え、日向を歩くと頭がクラッとくる暑さだ。
歩いて数分でビーチに到着。海岸の両側にはライフセーバーが監視台に座って海を双眼鏡で覗いてた。海の家のテントが2基はってあって、家族連れが数十人ほど海水浴に来ていた。早速、準備体操もせずに海に入る。海水はこの日照りで温まっており、海は凪だった。
遠浅の海、海底もサラサラの砂でゴツゴツした岩もないのでやっちゃいけない波に向かってずんずん沖へ泳ぎだした。
岸から200mほど来ただろうか。足が海底に着かないところまできた。そこでけたたましくサイレンが鳴った。唖然としてただ海の中に立ちすくんでいた。皆が岸へ喚声を上げながら向かっている。何が起こったか。わからない。
モーター付きのオレンジ色のゴムボートに乗った4,5人のライフセーバーが勢いをつけて岸から出たかと見ていたら、300mほど沖で黒い浮輪につかまって泳いでいた男を救助している。
ライフセーバーが手を差し伸べて、どっこらしょという具合の緩慢な救助ではない。男がボートの縁に手がつくやいなや、ボートはフルスピードでまた別の男を救助する光景をみて、初めてこれはジョーズが出たに違いないと思った。映画のジョーズが出てくるシーンと全く同じ光景が自分の目の前に広がっている。
海の中から一刻も早く脱出しなければ脚をサメに喰いちぎられてしまう。必死で岸まで泳ぐ。200mはなかなか遠い。後ろから助けは来ない。力んで泳ぐと意に反して体は前に進まない。脚をガブリとやられるかもしれない恐怖はなんとも形容しがたい。無我夢中で息つぎなしのクロール泳ぎで誰かの声がやっと聞こえるところまできた。やっと海水が腰までのところまで泳いでやっと一息ついた。助かった。
家に帰って一部始終を家のオーナーのおばあちゃんに報告したら、そうそう言うのを忘れていたって、ビーチには人喰いザメが出て、ひとりが被災して片脚を喰いちぎられたのよ。それ以来サイレンをつけるようになったのよ。
こういうことは早く言ってもらわないと第二の被災者が出るところだったって言ったら、おばあちゃんが喜ぶことこの上なし。